乱視のお話し~その3 「オートレフで乱視測定」
今日は乱視測定にはかかせない「オートレフ」という機械についてお話しします。
メガネを検査するときに、ほとんどのところで使用している機械に「オートレフ」というものがあります。正式には自動屈折計(Auto Refract Mater)と呼びます。
手前の黒いジョイスティックでターゲットマークを瞳孔の中心付近にあわせてボタンを押すとメガネのレンズ度数(近視・遠視・乱視・乱視の軸度)を自動的に測定するものです。
本体に内蔵されているCCDカメラの画像が液晶モニターに表示されているところです。
測定を開始すると様々な情報が出てきます。
左上の「S」は球面度数、
その下の「C」は乱視度数、
更にその下の「A」は乱視の軸度が
表示されています。
そのほか測定回数、角膜頂点間距離、C面の極性、アウトプットのシリアルナンバーなど様々です。
オートレフで測定される度数の信頼性という部分が実に微妙です。
今から35年くらい前にアメリカ製のIR6600というオートレフがありました。当時の販売価格がたしか百万の位ではなく千万の位に近かったのではないかと思いますが、このころはアナログとデジタルのハイブリッド回路で構成されていました。ボディーの中を開けて見せてもらいましたが回路基板が十数枚もびっしりとつまっていて驚きました。しかしいざ測定すると強度の度数測定にはある程度の精度が出ますが、弱度の測定値のばらつきが激しくて「アリャ!」という感じでした。恐らく当時のA/Dコンバータの分解能が低かったことと、自動のダイナミックレンジ変換機構がソフトとともに虚弱だったのではないかと思います。
この当時次々とオートレフが開発され、ついには日本でも開発されて価格が200~300万ぐらいに下がった時点で多くの眼鏡店が導入し出したのです。しかし測定値の精度は相変わらず個体差が激しく、内蔵のCPUが16Bitになり高速高分解能A/Dコンバータの価格が下がり出してからやっと精度が出始めました。A/Dコンバータの分解能が8Bitと10Bitでは4倍の情報量があり、12Bitになれば8倍もの情報量があります。
オートレフの基本はオートフォーカス機構のようなものですから、基準光の微妙なピント移動量をエンコーダーで捉えるので、弱度の場合の小さな移動量の検出精度を上げるには高分解のエンコーダーとA/Dコンバータ、それに見合う高速演算CPUが必要なのです。
現在のオートレフは昔とは比べ物にならないくらいシンプルで進化していますが、それでも機械だけでない要素があるために測定精度が100%ではありません。
まずこの画像を見てください。
前出のモニター画像との違いに気づきましたか。
そうです、うわまぶた(上眼瞼)が下がっていますね。問題はこれなんです。
オートレフのセンサーは0~180゜まで回転しながら半径R分までのピント移動量と前後方向のピント移動量を測定しますので、上眼瞼が下がっているとまつ毛にセンサーの光がかかってしまって測定誤差が出てしまいます。ですからオートレフで目を計ってもらう時には目を大きく開けて調べる必要があります。測定値の信頼係数を表示するシステムもありますが、信頼係数の算出の仕方で影響を受けるのにその方法を示していないことから当方はあまり信頼しておりません。メーカーは何故自己キャリブレーションの方法をとらないのか不思議です。
オーレフ検査は他覚検査であって、この結果だけをもとにメガネは作れません。他覚検査の数値を参考にして自覚検査の結果で製作します。
オートレフの信頼性と測定状態の関係を示す画像が下の画像です。
IT系メガネショップ J-EYE
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