反応速度測定システム「PasoMega®RTime」開発秘話
きっかけは脳梗塞で2種免許を失効したタクシー運転手さん...
昨年秋、あるタクシー運転手さんから「深視力測定」を依頼される連絡が入りました。
お話を伺ったところ免許更新の直前で脳梗塞になってしまい、入院していたので免許が失効して困っておられました。深視力検査を標榜する店舗数店に事情を話すも断られ、藁をもすがる思いで当店にご連絡いただいたようです。
その時点ではすでに退院したものの、半身の麻痺が続きリハビリを継続されているようでした。あまりにもお気の毒であったことと、視力はある程度見えるとのことでしたのでご来店いただきました。
実は免許証は失効から6か月以内は救済期間として再度視力検査と深視力検査をパスして書類提出すれば交付されるのです。このことはご本人もご存じでしたが、問題は深視力測定です。左半身の麻痺が残りリハビリ中とのことでしたが、動く方の手の指もボタンを押すタイミングがなかなか合いません。
深視力検査では、たった0.1秒の違いで2~3mmのズレを生じるからです。この僅かなズレで泣かされている人がかなりおられます。
視力はそこそこ出ていたので、恐らく「三桿は見えていてもボタンを押しにくいのでは?」と感じました。しかしその時点では正確な反応速度を調べる手立てがなかったので、直感的になんとか開発できないか考えました。当店では僅かでも開発にポジティブな可能性が見いだせる内容と判断した場合、研究対象として対応することがあります。
ネットで「反応速度」を調べたところいろいろな種類があり、深視力測定に効果的なものはどの反応速度を測定したらよいか、1か月ほどかけて専門家の執筆した学術論文を調査しました。そこでいろいろな資料と出会い、後にシステム開発に大きな参考になりました。
実際にWEB上でもすでに反応速度を調べるものはあったのですが、ネット上の速度測定はいくつかの問題点があって深視力向上には使えそうにありませんでした。最も大きな問題は、オンラインのものはネットの同期タイマーを使用している点と通信速度に影響されるためシステムが安定せず、測定時間の精度・信頼性が低かったからです。
さらにパソコンのキーボードを使用するとどうしても構造的に0.1秒程度遅くなることが判明し、深視力測定器で使用するものと同等なスイッチをパソコンに接続する外部スイッチを作成しました。これもけっこう大変でしたが良好な結果を出すことができました。
またWindows系の開発言語には高精度タイマーを発生するコンポーネントが用意されているので、反応速度測定ソフトを0から開発しました。
その年の暮に、完成した試作システムで例のタクシー運転手さんに試したところ右手親指での反応速度は平均0.3秒台で標準的になったことがわかり、深視力検査の練習をしてから、あと3日で2種免許が完全失効というところで神奈川県の試験場に行かれました。
数日してご本人から電話があり、なんと
「おかげさまで...どうにか無事に合格しました...ありがとうございました...」
というリベンジの吉報をいただきました。ご努力の限りを尽くされたことを思うと胸が熱くなりました。
ご本人のご不自由な片足を引きずりながら運転試験場に向かう姿を見送ったことが忘れられず、当方も家内も鳥肌の立つような感激をいたしました。当社の技術がお役に立てて冥利に尽きる瞬間です。
おそらくこの半年間はかけがえのないお仕事を失職するかもしれないご不安を抱えた毎日だったことでしょう。今後のリハビリが進み、一日も早く職場に復帰できることを願ってやみません。
反応速度は個人差・年齢差があり、深視力測定に影響することがわかっていますが、さらに深く関連性の研究を積み重ねる必要があります。それはシステムのみならず利用技術も考慮しなくてはなりません。今後も深視力検査に困っておられる方のために新しいシステム開発を進めたいと思っています。今後の発表にご期待ください。
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